EV車へのシフトでDX推進が加速する?

温暖化が進行し、EV化が急務の自動車業界。今回は、EV車普及と業界のDX化について解説していきたいと思います。

COP26で新車販売のゼロエミッション化に関する共同声明を発表

まずは、こちらの動画をご覧ください。

この動画は、2015年カンヌライオンズで受賞したVOLVO社の「Life Paint」という動画で、夜間の自転車交通事故を減らすための施策として公開されたものです。実際にスプレーを販売し、ブランドメッセージを訴求するために考案されました。

さて、先日開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、全ての新車販売を2035年(世界全体では2040年)までに電気自動車(EV車)などのゼロエミッション車とすることを目指す共同声明が発表されました。しかし、先進国ながら署名しない国もあったのです。

日本は同意せず

EU圏内やカナダ、チリを含めた20以上の国が同意したのにもかかわらず、日本は同意しませんでした。何故、同意しなかったのでしょうか。

インフラ整備不足

資源エネルギー庁2021年7月分の発表によると、電力供給に、火力は77.1%(その中で石炭は31.9%)とかなりの量でCO2排出のもとになっており、ゼロエミッションの電力供給はまだまだといえます。

また、経済産業省2017年の発表によると、充電設備の設置は新築戸建ての60%、新築マンションの99%とそれぞれで非設置という状況です。特に都市部ではマンションへの設置が進まなければ、普及は難しいと考えられるでしょう。そこで、事業所、道の駅、高速道路SA・PAなどの駐車場を対象とした充電インフラ整備事業費補助金を設けていますが、車両価格の高騰と航続距離がネックとなり設備導入が遅れています。

雇用への影響を懸念

さらに、エンジンからモーターへシフトすることで、部品パーツはおよそ3万点からその半分程度で構成されるため、部品メーカーの雇用への影響が懸念されています。さらに国もハイブリッド技術をできるだけ生かしながら、本格的な電動化の時代に備える道のりを描いていることも影響しています。

ノスタルジーが招くDX化の弊害

かつて日本は自動車産業や製造業で世界のトップを走っていました。しかし、現在では「ジャパンアズNo.1」を回顧するあまり、以下のような問題に目をそらし、EV車社会に乗り遅れる可能性を秘めています。

  • 国内1億2千万人の市場主義
  • 雇用を守るがゆえの技術革新の遅延
  • 熟練技術の門外不出による後継者不足

映画「Back to the Future Part II」は2015年の設定で、劇中では「テレワーク」の描写や「自動で靴ひもが締まるスニーカー:Nike Mag」が登場しますが、既にどちらも実現化しています。さらに「デロリアン・DMC-12」のように空飛ぶクルマの実用化もすぐそこまで来ています。

要するに、国のはたらきかけを待つだけではなく、排気ガスゼロを目指すために、あらゆる可能性を模索する必要があります。既に国内の部品メーカーではEV車用モーターを中国にて展開しています。

DX化を推進し、国内外の市場も視野に入れ、技術革新を継続させながら他の技術にも応用し、熟練技術のデジタル化で後継者不足を解消するといったことを継続できれば、ゼロエミッション車のその先にある、企業の価値を大きく左右する自動車事故ゼロに向かって進むことができるといえます。

Volvo Cars LifePaint

https://www.youtube.com/watch?v=1NELmGVoebE

JETRO:COP26で新車販売のゼロエミッション化に関する共同声明を発表

https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/11/05ffaf2d7bcbd10d.html

資源エネルギー庁:電力調査統計

https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/pdf/2021/0-2021.pdf

経済産業省:電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の充電インフラ整備事業費補助金について

https://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/review2017/html/h29_s6.pdf