「#DXおさらい」デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)推進に必要な役割とは

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と提唱されたと言われています。

要約すると、「データとデジタル技術を活用し、ビジネスモデルの変革や業務・組織の改革に取り組むこと」になり、これによって市場の変化に対応できる企業になることを目的としているのです。

2018年に経済産業省が発表したDXレポートで、「2025年の崖」という言葉が初めて使用されました。これは、国内の企業がDX(Digital Transformation)を推進しなければ業務効率・競争力の低下は避けられず、競争力が低下した場合、想定として2025年以降年間で約12兆円もの経済損失が出ると予測されており、その危うさを表現したものなのです。

デジタル技術を使って新たなビジネスを生み出したり、クライアントや生活者のエクスペリエンス(体験)を向上することがDXの目的です。私たちは、将来「2025年の崖」に直面しないためにも、一刻も早く日本のDX推進を再考すべきではないでしょうか。しかし、システムの入れ替えだけでDX(デジタル)化していると考えている企業も少なくないのが現状です。

世界における日本のデジタル化は技術後進国になりつつある

国際経営開発研究所(IMD:International Institute for Management Development)が発表しているデジタル競争力ランキングによると、日本は63カ国中、2017年は27位、2018年は22位でした。そして、2019年は23位、2020年は27位、2021年は28位、2022年は29位と技術後進国になりつつあります。

よく言われる「DX(デジタル)人材不足」ですが、DXを推進するにあたり、課題は人材確保だけなのでしょうか。経営層がバズワードのような「#DX化」を鵜吞みにし見切り発車でスタートしてみたところ、そもそもの「目的」が決まっていないことが多く、「情報システム部門主導ではじめてみたものの、クライアントや社内他部署からの問い合わせや、使いにくいなどのクレーム対応が増え続け本来の業務に集中できない」、「どのような人材が必要か分からない」、「人材育成ができない」など、課題が山積してしまうようなパターンも見受けられます。

では、どのような人材を確保し役割を与えればDXを推進できるのでしょうか。

デジタルトランスフォーメーションの推進に必要な人材と役割

2021年8月のガートナー社の発表によると、以下の5つの人材と役割がDXを推進するために必要だと提言しています。

  1. ビジネス系プロデューサー(ビジネス・アーキテクト)
    DXによるビジネス・ゴールを定義し、新たなビジネス・モデルや、DXに関する企画を考えたりする役割を担います。経営層や社内外の意思決定者とのビジネス面でのコミュニケーションにも責任を負います。
  2. テクノロジ系プロデューサー(テクノロジ・アーキテクト)
    ビジネス・ゴールの達成に向けた最適なデジタル・テクノロジーの特定やテクノロジーの適用によるシステム面の影響の分析、予測などを担います。経営層や社内外のエコシステムのパートナーに対する技術面のコミュニケーションにも責任を負います。
  3. テクノロジスト(エンジニア)
    現場で実際にテクノロジーを活用する役割を担います。自動化、データ・サイエンス、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)などの新興領域に注目しがちですが、確実にDXを推進していくためには、通信ネットワーク、IT基盤、セキュリティ、クラウドなどの既存の領域の役割も重要です。
  4. デザイナー
    ソリューション、サービス、アプリケーションのUX(ユーザーエクスペリエンス)をデザインします。UX面のコミュニケーション、UXとデザインに関する知識の社内普及に向けた教育なども実施します。
  5. チェンジ・リーダー
    デジタル・テクノロジーの導入に伴う働き方(業務、意識など)のシフトの主導、変革の目的やゴールの整理、変革のコミュニケーション計画の作成、関係者全員を巻き込んだ意識と行動変容に向けた施策の計画/展開などを担います。

ビジネス系プロデューザーとテクノロジ系プロデューサーは1つの役割に捉えられることもありますが、求められる知識や能力が異なるため、分けて考えることが望ましいです。また、理想的には全従業員がビジネス系プロデューサーであるという意識を持って取り組むことが、企業としてのDXの成功につながります。

チェンジ・リーダーは必ず社内のメンバーで担い、DXを推進する専門部署や経営企画などを中心に、社内全体に配置するのが望ましいです。

さらに、デザイナーには、情報システム目線のエクスペリエンス(システム基盤の運用やコスト面など)だけを考えれば良いわけではありません。それが仮にシステムの入れ替えだけだったとしてもです。現場で使う担当者のことはもちろんのこと、その先のクライアントや生活者のエクスペリエンスも考える必要があります。

そもそもに立ち返る

5つの役割をすべて1人で対応することは現実的に難しいです。自社のDX戦略に合わせてどのような能力がどの程度必要なのか、特に重視する能力を見極めてバランスを考えることが重要です。例えば、新規ビジネス創出の場合と業務革新の場合とでは、必要なデジタル・イノベーションの知識、ITスキル、ビジネス経験のバランスは異なるからです。

また、育成においても同様です。すべてに秀でている人材を育てるのは現実的ではありません。自社の目的に合った人材を育てることをゴールに据えると、候補者の選定や人材の育成がしやすくなります。

繰り返しとなりますが、人材発掘と育成のためには、DXの戦略とゴールを明確化し、共通の分かりやすい言語でコミュニケーションを取ることが必須です。DX推進の前に一度、立ち戻って考えてみてはいかがでしょうか。

IMD世界デジタル競争力ランキング2022発表に合わせて「日本のデジタル競争力に関する調査」を実施

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000095869.html

Gartner、デジタル・トランスフォーメーションの推進に必要な5つの役割を発表

https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20210818